本棚の置物:『ノストラダムスの大予言』(1974)

『『日本沈没』や『ノストラダムスの大予言』は、自分にとって特撮映画を志すきっかけの作品になりました』
※CINEMA-KAN『ノストラダムスの大予言』オリジナルサウンドトラック帯より樋口真嗣監督のコメント。

さてさて今宵は(気取り気味・・・)
『ノストラダムスの大予言』を取り上げたいと思います。東宝ディザスター映画第2弾。『エクソシスト』、『華麗なる一族』、『男はつらいよ寅次郎子守唄』、『寅次郎恋やつれ』、『タワーリングインフェルノ』、『大地震』、『エスパイ』などライバルを相手に興行成績ではかなり善戦していました。

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【国内ノストラダムスこと始め】

そもそも『ノストラダムスの大予言』は国内に限り五島勉のノンフィクション風味の創作作品が初出ではない。では、誰が紹介したか?

その人は『空の大怪獣ラドン』、『大怪獣バラン』の原案者・黒沼健。 『Great Prophecies』と海外で呼んだ例があるものを黒沼が日本に輸入したのが国内ノストラダムス文学のハシリと言える。『大予言』最初の名付け親だということも判明。当初は『百詩集』と名付けていた。

澁澤龍彦や南山宏は文庫クセジュの『16世紀フランス文学』より『百詩篇』の訳に倣ったとされる。が、南山は後年に『諸世紀』と言い換えている。そして、新たな波が到来する。

後年、ルポライター・『サソリのベン』こと五島勉がその題材に目を付けた。公害や世情不安、終末と呼ぶに等しい昭和40年代後半。

昭和48年。祥伝社ノンブックス『ノストラダムスの大予言』は産声を上げ、同時期の小松左京原作小説『日本沈没』上下巻とともにベストセラーとなる。一説によると美容院の待ち相席の本棚にも山積みしていたほど、主婦らが真剣に読んでいたのだ。多分、漠然とした不安と日常を少し忘れるためのファンタジーとしてだろうけれど。



五島勉に関しては機会を改めて書きたい。水木しげるの『悪魔くん ノストラダムス大予言』もかぶるので。



【大予言特撮班の苦闘(がんばり)を予言せず】

さて、本編の話に。二匹のドジョウを狙う東宝が映画化権を獲得。昭和49年2月に記者会見。4月に本編が、5月に特撮がクランクイン。6月には特撮撮影で第7ステージが焼失。特殊効果の渡辺忠昭氏が失火させた責任を取る形で辞表まで忍ばせていたが、消防署からは早めの消火活動もあり、厳重注意で済み、会社からは『よくやった』と絶賛された。


※門外不出レベルのスナップも実は存在する。 『当時の地球防衛チーム』が撮影の合間に火事見舞いする光景。もし、見る機会があったら背番号で誰か当ててみよう。あ!?ネタバレかな??


これが返って宣伝になったと思われる。渡辺氏は前年の『日本沈没』でコンビナート爆破シーンで川北紘一助監督からはOKを貰ったものの、中野昭慶監督は『迫力が足りない』と言われ、3倍量の火薬で再テイク。ベニヤ板で炎を防いだが、近くまで炎が届き、中野監督は驚きながらもOKを出した。

『ヤマトタケル』(1993)でもヤマタノオロチに限界まで火を吐かせたダイナミックなシーンは多分、これらの経験上から逆算していたのかも。

『大予言火事を予言せず』・・・。毎日新聞らしい見出しだが、のちの平成元号における大誤報にも通ずるアシストぶり(笑)

作品を巡る公開後から現代に至る状況は数多で語られているので省きます。 同じことを書いてもつまらないしね。人類滅亡後の世界の舞台裏でも貼ります。

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が、公開当時映画を観てこう思った方も多いのではないかと。なにせ『東宝チャンピオン祭り』の期間だったし・・。


(建物のミニチュアが怪獣モノと同じ方式で倒壊するので)
『怪獣映画なのに怪獣が出ないじゃないか』(怒)
※東京人2016年8月号『特集 1960年代特撮と東京』
『鼎談 ぼくらは特撮で大きくなった』より樋口真嗣監督の父上様の一言思い出話。



顔役のミニチュアであるSSTコンコルドは最近になって基となったモデルが判明したりと。なんと、参考にされたのは日東科学のプラモデル。現行商品でもあるにはあるのだが、少し形が違うかな?実ミニチュアは2メートルサイズと33センチサイズだったりする。機体下面のディテールが判明すれば、現行モデルで製作したい。

首都高でグリッドロック状態の車列ミニチュアは市販トイやプラモを使用。鉄砲水に飲まれるダンプカーやショベルカーはヨネザワ製ミニカーを使用。あ、ちなみに『シン・ゴジラ』の矢口らが巻き込まれたグリッドロック状態及び都市部における食糧不足(による暴動も示唆)はこの作品から引用されています。


【映像と音楽そして大予言の呪い?】

1986年4月に映像ソフトが発売される・・・はずだったが、公開されている理由の通り(もはや差別問題ではなく、当時の経緯を知る一社員の要請~発売自粛)、現在に至るも映像商品化は未だ果たされていない。月刊誌となった『宇宙船』にも広告が掲載され、発売するものだと思っていた矢先に発売中止。同時期の模型情報誌(バンダイホビー事業部)に至っては同時発売の『宇宙Gメン』のみのリリース広告に差し替えられた形跡もある(目立たせるためにマイナードラマ枠としての記事まである)。

※その『模型情報』誌1986年刊行の出版物が入手叶わず。いつか機会があれば詳細を語りたい。

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が、音楽は止まる気配が無い。

2019年4月下旬にはCINEMA-CANからは究極盤というか冨田勲氏追悼盤と言うべきだろうか、盛り沢山なサントラCDがリリースされた。長らくプレミアが付いて入手が難しかった東宝レコードLP盤音源がデジタルマスタリングで聴ける、というのは感動の極み。曲の出だしやブリッジ曲である『滅亡のテーマ』とのかぶりの境目が分かりやすく、迫力を生む。

商品レビューに関してはツイッターで書く機会に恵まれたのでここでは省かせていただきます。特撮映画サントラコレクションに加えても損の無い逸品であることを記しておきます。これは決して最終盤ではなく、『究極盤』です。

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オーケストラとシンセサイザーが融合し奏でる四次元空間への誘い。あ、ヤプール人は出てきません(笑)

2018年9月、追悼コンサートとなった『冨田勲映像音楽の世界』では『ノストラダムスの大予言』だけではなく、『愛~コムポジション~』、『徳川家康』など、オーケストラとシンセの世界が堪能出来た(ブログ主はTV放送で視聴)。冨田勲氏は巨匠でした。贅沢を言うなら、『初音ミク~イーハトーヴ交響曲~』は必須だったのでないかと。

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・・・・・桜ミクですまん。これしか画像が無いのだよ・・・・・。

ノストラダムスの呪い、そういうのがあるそうで。作曲家の和田則彦が発表した電子音楽作品『ノストラミー』初演に纏わる奇妙な出来事があったそうだが、果たして、真相は?詳細は『エニグマ』1977年4月号(ユニバース出版社)を音楽書籍系古書店で探して見つけるしかない。なお、本作品のあらゆるトラブルに関しても興味深い記述もあるとか。

昨年のコンサートでも『ノストラダムスの大予言』組曲上演中に機材トラブルが発生して、問題が解消し再上演した経緯がある。果たして、これもノストラダムスの呪いなのか?


【まるちゃん対明日のテスト】

最後に、『ちびまる子ちゃん』では、まるちゃんがノストラダムスブームで漠然とした不安を抽象するなど、時代を表したキーアイコン。

昭和49年7月25日午後8時からフジテレビ系列で放送した木曜大特集『㊙ノストラダムスの大予言』もネタとして取り上げられている。実番組ではあべ静江、山本リンダ、五木ひろし、丹波哲郎、司葉子、由美かおる、黒沢年男が出演していた。

ゲストのひとり、五木ひろしの

『私は今日、由美かおるさんのヌードを見るために来ました』


とニコニコしながら喋っていたと記憶する特撮系ライターさんの幼少時の思い出話・・・多分本当だろうな(汗)
今じゃ公共の電波を使ってセクハラ云々で即座に炎上レベル・・・。のどかだな~・・・。

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由美かおるで思い出したので余談。特撮スタッフに振る舞ったとされる手料理の巨大たこ焼きが未だに謎の存在だ。中野監督のインタビューでのポロリ思い出話。余りの大きさに昼飯がそれだけで済んだとか。


翌日の算数のテストが嫌でまったくテスト勉強をしないと開き直るはまじと意気投合。まるちゃんも明日のテストからの逃避で1999年まで遊んで暮らすと言うが、案の定、お姉ちゃんから『1999年に何も起こらなかったらどうすんのよ?あんたただのバカな大人よ。予言が当たるかどうかなんて分からないけれど明日のテストで悪い点を取ったら、確実に怒られるのよ』と諭されハッとする。 『ノストラダムスに明日のテストを占って欲しいよ・・・』。勉強の甲斐あって次第点を取ったまるちゃん。はまじは『ノストラダムスの大予言』なんて関係なく0点を取ってしまった。

ブー太郎の『ノストラダムスのジイさん』は思いっきり吹いたぞwwwww


しかし・・・当の原作者・さくらももこは・・・・・・・・。

『昭和49年という永遠のループの中でまる子は生きている』と映画『ちびまる子ちゃん イタリアから来た少年』の監督とプロデューサーのコメントが興味深い。現在、アニメイトTVではその番組が削除されており視聴が出来ません。

現在、活躍されているベテランクリエイター様は昭和40年代育ちの方が多いとか。実体験の共有が成されているのかと思います。

『ノストラダムスの大予言』と昭和49(1974)年。想像の域ではあっさりと行ける終末や人類滅亡の世界とは裏腹に、現実はノスタルジックな夕焼けと『愛のテーマ』が融合した何処か日常が支配するのどかな世界だったのかもしれない。1980年代初頭に小学生の自分が見た風景とはまた違ったものだろう・・・・・。


まあ、こんな事を書いている段階で現実逃避と言うのはナシで(笑)

今回は時間の制約や準備期間の短さで想定していたものと仕上がりが甘いです。申し訳ないです。今後予定している『恐怖の大魔王』編(仮タイトル)で劇中音楽や五島勉をはじめ、と学会で取り上げた部分などを掘り下げてみたいと思います。


【書籍参考資料】

『ノストラダムスの大予言』パンフレット
『ノストラダムスの大予言』宣伝材料
『東宝特撮映画全史』
(以下、東宝出版)

『特撮秘宝』vol.6『平成ゴジラ30年』、vol8『特撮の悪役』
別冊映画秘宝『オール東宝メカニック大図鑑』
映画秘宝『70's映画懐かし地獄』
『1973 日本沈没完全資料集成』
(以下、洋泉社)

月刊『宇宙船』1986年4月号(朝日ソノラマ)

『東宝特殊美術部の仕事』(ににたかし著・新紀元社)

『トンデモノストラダムス解剖学~本当のこと、みんな知らない~』(清水一夫著・データハウス)
『と学会アーカイブス』(と学会)
『トンデモ創世記』文庫版(唐沢俊一・清水一夫著・扶桑社)

『東京人』2016年8月号・特集『1960年代特撮と東京』(都市出版)

ドラマCD『ノストラダムスの大予言 本編完全収録盤』(グリフォン)ブックレット

J-CINEサントラコレクション『ノストラダムスの大予言』(vap)ブックレット

CINEMA-KAN『ノストラダムスの大予言オリジナル・サウンドトラック』(disk union)ブックレット

【映像参考資料】
『ノストラダムスの大予言』(1974(昭和49)年・東宝・東宝映像)

VHS『東宝特撮映画予告編集』第4巻 ※『ノストラダムスの大予言』予告編収録巻(東宝ビデオ)

アニメ『ちびまる子ちゃん』第69話『まる子 ノストラダムスの予言を気にする』の巻(フジテレビ)

『エンター・ザ・ミュージック』冨田勲特集第5弾『冨田勲・映像音楽の世界』(BSテレ東)
※2018年9月17日に東京国際フォーラムで開催された
『冨田勲・映像音楽の世界~SOUNDS OF TOMITA~』のダイジェスト放送。

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